木造建築は、鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比較して減価償却期間が短いことがメリットの一つです。
しかし、建築物の種類や用途によって耐用年数が異なります。
そのため「結局、何年で償却できるのか?」と疑問に感じている方もいるのではないでしょうか?
この記事では、木造建築の減価償却期間について、耐用年数や計算方法をわかりやすく解説します。
倉庫、店舗、事務所、工場など、事業用木造建築の減価償却について理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
木造建築の減価償却と耐用年数
木造建築の減価償却に焦点を当て、以下の4つのポイントについて解説します。
● 減価償却とは
● 法的耐用年数とは
● 居住用と業務用の耐用年数とは
● 物理的耐用年数と経済的耐用年数とは
それぞれ詳しく見ていきましょう。
減価償却とは
減価償却とは、建物や設備などの固定資産を長期間にわたって使用することで生じる価値の減少(減価)を、一定期間ごと費用として計上していく会計処理のことです。
高額な建物を購入した場合、その購入費用を一括で経費にするのではなく、分割して経費計上していきます。
「将来の経済的利益を得るために使用される資源」という定義に基づいています。
事業者は減価償却を行うことで、税負担を軽減できるといったメリットがあります。
減価償却できるのは、取得価格が10万円以上で法定耐用年数が1年以上の資産が対象です。
対象となる資産の例として以下のようなものがあります。
● 車両
● 工具・運搬具
● 器具・備品
● 機械・装置
資産を購入した年に一括で経費計上せず、何年にもわたって少しずつ資産価値を減少させていきます。
それぞれの資産は、法定年数が決められており、毎年一定額を利益から経費として差し引いていくのです。
参照:国税庁|減価償却のあらまし
法的耐用年数とは
木造建築物の耐用年数は、用途に応じて定められており、その年数に基づき減価償却期間が決定されます。
木造建築物の耐用年数は、建物の用途や構造によって異なります。
用途ごとの耐用年数は、以下の表のとおりです。
用途 | 耐用年数(年) |
---|---|
事務所用のもの | 24 |
店舗用・住宅用のもの | 22 |
飲食店用のもの | 20 |
旅館用・ホテル用・病院用・従業員用のもの | 17 |
公衆浴場用のもの | 12 |
工場用・倉庫用のもの(一般用) | 15 |
参照:国税庁|主な減価償却資産の耐用年数表
法改正などによって耐用年数が変更される場合もあるため、最新情報に注意しておきましょう。
居住用と業務用の耐用年数とは
木造建築の場合、居住用と業務用の法定耐用年数は違います。
それぞれ以下のとおりです。
居住用:33年
業務用:22年
居住用とは、マイホームや別荘、相続した実家で事業に使用していない建物のことです。
業務用(事業用)とは、木造アパート、戸建て賃貸、店舗、事務所など事業用の建物のことをさします。
一般的に、居住用よりも業務用の方が耐用年数が短く設定されています。
これは、業務用の方が、使用頻度や負荷が高く、劣化しやすいと考えられているためです。
物理的耐用年数と経済的耐用年数とは
耐用年数には、「物理的耐用年数」と「経済的耐用年数」、また上記で解説した「法定耐用年数」の3種類があります。
● 物理的耐用年数:経年劣化や自然損耗などにより、物理的に建物が利用できなくなる年数
● 経済的耐用年数:経済的価値が生じている期間や年数、デザインや仕様が影響
● 法定耐用年数:税法で定められた、建物を減価償却するための基準となる年数
木造建築の法定耐用年数は22年ですが、物理的耐用年数は一般的に40~50年あるといわれています。
また、経済的耐用年数は、トレンドに関係あるものであれば短く、関係ないものであれば長く、明確に定義するのは困難です。
物理的耐用年数は設置されている環境や使用状況によって変動するため、あくまでも一定の目安だと認識しておきましょう。
木造建築の減価償却の計算方法
木造建築の減価償却の計算方法について解説します。
● 居住用建物の減価償却の計算方法
● 業務用建物の減価償却の計算方法
● 直接法と間接法
● 定額法と定率法
それぞれ詳しく見ていきましょう。
居住用建物の減価償却の計算方法
住居用建物の減価償却方法(定額法)は、下記の計算式にあてはめます。
減価償却費 = 建物購入価額 × 償却率(0.031)
償却率は新築であれば、償却率は耐用年数33年に相当する「0.031(1÷33)」を使用します。
経過年数は築年数ではなく取得してからの期間をあてはめます。
また、6か月以上の端数は1年として計算し、6か月未満は切り捨てます。
最終的に、建物価値はゼロ円まで償却されるわけではなく、「建物購入額の5%」になる値までで減価償却は止めます。
業務用建物の減価償却の計算方法
2007年4月1日以降に取得した業務用建物は「新定額法」の計算式を使用し、2016年4月1日以降に取得した建物付属設備および構築物は、定額法で減価償却します。
その計算式は以下のとおりです。
減価償却費 = 建物購入価額 × 償却率(0.046)
新築であれば償却率は法定耐用年数22年に相当する「0.046(1÷22)」を使用しましょう。
業務用の場合は、建物価格が1円になるまで計算していきます。
直接法と間接法
減価償却費の会計処理上の計算方法として、「直接法」と「間接法」の2種類があります。
それぞれの特徴は以下のとおりです。
直接法:減価償却費を減価償却資産の取得原価から直接控除する方法
間接法:減価償却費を減価償却累計額として処理する方法
直接法のメリットは、資産の現況が分かりやすく計算がシンプルな点です。
デメリットは、過去の取得原価を把握しづらくなることです。
間接法は、取得原価が常に残るため、過去の情報を把握しやすいのがメリットです。
固定資産の金額が変わらないため、財務諸表の見やすさが向上します。
ただし、資産の現況を把握するためには計算が必要です。
どちらの方法を選ぶかは、会計処理の際に重視する情報によって異なります。
直接法は、資産の現況を常に把握したい場合、間接法は、取得原価を常に残しておきたい場合に利用しましょう。
定額法と定率法
減価償却費の計算方法として、「定額法」と「定率法」の2種類があります。
居住用建物の減価償却費の計算には、一般的に「定額法」が用いられます。
定額法とは、毎年一定額の減価償却費を計上する方法です。
ただし、一定の要件を満たす場合には、「定率法」を選択できます。
定率法とは、毎年、減価償却資産の残存価額に対して一定の率を乗じて減価償却費を計上する方法です。
定額法 | 定率法 | |
---|---|---|
特徴 | 原則として毎年同額 |
償却費の額は初めの年ほど多く、年とともに減少する ただし、定率法の償却率により計算した償却額が「償却保証額」に 満たなくなった年分以後は、毎年同額となる |
計算方法 | 取得価額×定額法の償却率 |
未償却残高×定率法の償却率 ただし上記の金額が償却保証額に満たなくなった年以後は次の算式による。 ※改定取得価額×改定償却率 |
減価償却資産の種類ごとに計算方法を選定しますが、償却方法を決める際には届け出が必要です。
新たに業務を始めた時に、減価償却の方法を選定して、その翌年の3月15日までに所轄の税務署長に届け出ましょう。
届出がない場合は、法定の償却方法で計算されますが、一般的には定額法が選択されます。
定額法は、計算が簡単であるというメリットがありますが、減価償却の初期段階では、減価償却費が大きくなり、利益を圧迫する可能性もあります。
一方、定率法は、減価償却の初期段階では、減価償却費が小さくなるため、利益を圧迫しにくいというメリットがある一方、計算が複雑になるというデメリットがあります。
国税庁|No.2106 定額法と定率法による減価償却
事業用木造建築のメリット
事業用建築物を検討する際に、木造建築を選ぶメリットは多くあります。
● 鉄骨造の半分以下の期間で減価償却できる
● 建設期間が短い
● 実際の耐用年数は長い
ここでは、減価償却と木造建築のメリットの観点から解説します。
鉄骨造の半分以下の期間で減価償却できる
同じ建築費の場合、毎年計上できる経費額は、木造建築のほうが大きくなります。
例えば、建築費3,000万円の倉庫の場合、毎年計上できる減価償却費は、木造の場合200万円に対し、鉄筋コンクリートは79万円です。
これは、建築費を耐用年数で割った数値です。
それぞれの構造と用途における耐用年数は、以下のとおりです。
構造/用途 | 倉庫(年) | 事務所(年) | 店舗(年) |
---|---|---|---|
木 | 15 | 24 | 22 |
鉄筋コンクリート | 38 | 50 | 47 |
レンガ | 34 | 41 | 38 |
金属 | 31 | 38 | 34 |
参照:国税庁|主な減価償却資産の耐用年数表
木造建築は、鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比較して、減価償却期間が短いのがメリットです。
例えば、事務所として利用する場合、木造建築であれば法定耐用年数は24年ですが、鉄筋コンクリート造であれば50年と、期間が倍以上です。
減価償却期間が短いということは、その分、毎年計上できる経費が大きくなることを意味します。
建設期間が短い
木造、鉄筋コンクリート、鉄骨造の3つを比較すると、一般的に一番工期が短いとされるのが木造です。
木造の場合、他の建築物に比べて建物自体の重さが軽いことにより基礎工事の期間を短縮できるなどの理由から、全体の工期も短くできるためです。
それぞれの建設期間の目安は以下のとおりです。
構造 | 建設期間の目安 |
---|---|
木造 | (階数×1ヶ月)+1ヶ月 |
鉄筋コンクリート造 | (階数×1ヶ月)+3~5ヶ月 |
鉄骨造 | 約半年 |
3階建ての場合、木造は約4か月、鉄筋コンクリートで8か月、鉄骨造で約6か月が建設期間の目安となります。 ただし、この表は建て替えによる解体や地盤調査などの期間を含んでいません。 鉄骨造は、建物全体の重量が重いことから地盤改良や基礎工事が必要となり、地盤改良の期間がプラスされる可能性があります。 建築期間が短くすめば、建築にかかる人件費も抑えることができ、事業も早期に始められます。
実際の耐用年数は長い
木造建築は、鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比較して、耐震性や耐久性に劣るというイメージを持たれがちです。 しかし近年では、耐震技術や木材の防腐・防蟻処理技術が進歩しているため、以前よりも実質的な耐用年数を伸ばすことが可能になっています。 適切な設計施工・管理によって、木造建築も長く使うことができるのです。
事業用木造建築は減価償却でのメリットも大きい
木造建築は、鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比較して減価償却期間が短いという点で、事業用建築物として多くのメリットがあります。
また、環境に優しいという観点からも、今後ますます注目が集まると予想されます。
店舗や倉庫などの事業用建築物の建設を検討する際は、木造建築という選択肢も視野に入れてみてはいかがでしょうか?
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