近年、工場を木造で建築するという事例が増えています。
鉄骨造や鉄筋コンクリート造が当たり前とされていた工場建築をあえて木造で建築する理由は、一体何でしょうか。
この記事では、工場を木造で建築する背景やメリットについて解説します。
木造で工場を建築することが社会貢献にもつながる理由についても解説していきましょう。
木造の工場が増えている背景
木造の工場が増えている背景は、次のふたつです。
・ 大空間の施工が可能なため
・ 政府が後押ししているため
それぞれ詳しく見ていきましょう。
大空間の施工が可能なため
今まで太い中間柱が必要だった木造建築物ですが、ATAハイブリッド構法であれば、木造建築でありながら内部の柱が不要です。
そのため、最長40mスパンの大空間が実現。中間柱のない広い空間のおかげで、工場内のレイアウトも自由にできるのです。
木造建築の工場が適している具体例としては、次のようなものがあります。
・ 木材のプレカット工場
・ 酒造工場
・ 組み立て工場 など
大空間の特徴を生かして、倉庫としても利用される事例も多く、工場と倉庫を併設して建てることも可能です。
政府が後押ししているため
東京オリンピックでは新国立競技場に全国の木材が使用されました。
その後も、多層階のオフィスビルを木造で建築する例も増えています。
この背景には、政府が掲げる「脱炭素化社会の実現」や「建築基準法の改正」があります。
脱炭素化社会と木造建築を関連付ける理由は以下です。
・ 戦後植林された森林の内、伐採されずに残っているものがある
・ 若い苗木が大木に育つ過程で二酸化炭素を多く吸収する
つまり、木造建築物を増やすことにより木材の使用が増え、それによって伐採されていない木材の活用を促します。
新しく植えられた若い苗木は、多くの二酸化炭素を吸収するため、カーボンニュートラルに貢献できるといった流れです。
その実現のために、今まで公共建築物に限定されていた木材利用促進法が、2021年(令和3年)に
「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」として、民間建築物にまで対象を拡大しました。
各省庁をあげて、公共の建築物に木材を積極的に使用してきましたが、それを民間建築物にも促しています。
その影響として、中高層木造建築物の着工面積は、2023年の時点で約46,000㎡と前年の数値の約2倍となっています。
おそらく、この流れは今後も続くでしょう。
木造工場を建設するメリット
木造工場を建設するメリットについて次の3点にまとめました。
・ 減価償却が早くできる
・ 働く人にやさしい
・ 社会貢献できる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
減価償却が早くできる
減価償却とは、設備投資などの費用を一定期間に配分して計上する会計処理を指します。 同じ建設金額の場合、減価償却期間が短いほど1年あたりに計上できる金額が大きいことを意味します。 会計上、利益から経費として引かれる金額が大きくなるため、減価償却期間が短い方が節税効果が高いといえるでしょう。 鉄骨造や鉄筋コンクリート造に比べると、木造のほうが減価償却期間が短いため会計上のメリットが大きいといえます。
構造の種類 | 工場の減価償却期間 |
---|---|
木造 | 15年 |
鉄筋コンクリート造 | 38年 |
鉄骨造(金属の太さによる) | 17~31年 |
参照:国税庁|おもな減価償却資産の耐用年数表
木造の工場の減価償却期間(=耐用年数)は15年と短めですが、メンテナンスをしっかりすれば15年以上の使用が可能です。
働く人にやさしい
木造の工場には、鉄骨や鉄筋コンクリートにはない「人に対するプラス効果」が期待できます。それが以下のとおりです。
・ 香り成分による消臭・殺菌効果
・ 有害な紫外線の吸収
・ 赤外線の高い反射率
・ 不快音を吸収
本来は樹木や植物が自己防衛のために放出している香り成分ですが、人間にとっても有効です。
消臭・殺菌効果以外にも、抗酸化・リラックス・免疫力向上などの効果が期待できます。
このような木材の癒し効果は「フィトンチッド」と呼ばれ、人間も森林浴によって効果が得られるといわれています。
また、森林浴以外にも木の家や施設内で過ごすことで、同じような効果が得られるそうです。
木材の紫外線を吸収し、赤外線を反射する性質は、工場内の温度を一定に保つ効果があります。
そのおかげで、底冷えによる風邪や高温による熱中症の危険性を低減するだけでなく、冷暖房費の削減にも寄与するでしょう。
さらに、木材は工場内で発生する不快な音の反響も最小限にとどめてくれます。
木材には、低音・中音・高音をバランスよく吸収してくれるため、音がまろやかになる効果があるためです。
画像引用:林野庁|木材は人にやさしい
林野庁の資料から分かるように、音の残留時間を計測したところ、木造のコンサートホールのほうが最適残留時間に限りなく近い結果を残しています。
社会貢献できる
国内産の木材を使用することや木造建築物を増やすことは政府の指針となっています。
その理由は、国内産の木材を使用することが脱酸素社会への貢献につながるためです。
樹木は、成長過程において二酸化炭素を吸収し、酸素を生成します。
そのため日本におけるカーボンニュートラルの実現のためには、森林の活用が不可欠とされています。
画像引用:林野庁|森林・林業・木材産業の現状と課題
積極的に国内産の木材を利用すれば、国内の森林の新陳代謝や育成の貢献につながります。
木造で工場を建築することが、カーボンニュートラル社会実現、林業の育成、地方創生など、さまざまな社会貢献となるのです。
画像引用:林野庁|森林・林業・木材産業の現状と課題
今までは、公共施設建築において推奨されていた木造建築ですが、民間建築物においても推奨されるようになりました。
林野庁が発表した『建築物に利用した木材に係る炭素貯蔵量の表示に関するガイドライン』では、建築物に利用した木材が抱える炭素貯蔵量の計算式を示しています。
これによって、どれだけカーボンニュートラルに貢献できたかが数値で見えるようになりました。
また建築物の木造化・木質化を推進するために利用可能な補助金や制度なども整えられています。
このような理由から、木造の工場建築は、社会貢献というカテゴリーで自社ブランディングにも効果が期待できるでしょう。
林野庁|建築物の木造化・木質化に活用可能な補助事業・制度等一覧(令和6年度予算・令和5年度補正予算)
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