木造建築の大空間を実現する上で欠かせないのが「トラス構造」です。 三角形を基本としたこの構造は、シンプルながらも優れた強度と軽量性を両立できるため、さまざまな建築物で採用されてきました。 近年では、木造建築の高層化や大空間化が進み、トラス構造の重要性はますます高まっています。 本記事では、木造トラス構造とは何か、そのメリット・デメリット、そして実際の事例や活用方法について詳しく解説します。 これから木造建築を検討される方や、トラス構造に興味をお持ちの方は、ぜひ参考にしてください。
木造トラス構造とは
木造トラス構造について、以下の3点にまとめました。
● 三角を基本とした構造
● トラス構造の主な種類
● 事例や活用法
それぞれ詳しく見ていきましょう。
三角を基本とした構造
「トラス」とは、構造体骨組の一種で、部材をピン接合して三角形で構成された骨組のことを指します。
鉄骨であれば、東京スカイツリーや東京タワー、鉄道の鉄橋、天井の梁などにトラス構造が利用されています。
荷重はすべて節点に作用するため、部材にかかる負担が少ないのが利点です。
建築物にかかる荷重をバランスよく外部に逃がせるため、おもに体育館やホールなど大きくて大スパンの建物に活用されています。
最近では、事務所や倉庫などにも取り入れられています。
トラス構造の主な種類
トラス構造のおもな種類として、以下の8つを紹介します。
トラス構造の種類 | 特徴 |
---|---|
プラットトラス | 斜材が中央に向かって下向きになっている構造 最も基本的なトラス構造 鉛直材で構成されたフレームに、斜材を組み合わせて三角形を形成 安定性が高く、水平スパンに最適 |
キングポストトラス | 中央にキングポストと呼ばれる垂直材を配置したトラス構造 部材数が少なく、軽量で施工しやすい |
クイーンポストトラス | 中央上部に2本の垂直材を配置したトラス構造 キングポストトラスよりも大きいスパンに対応できる 部材数が多くなる |
ハウトラス | 斜材と弦材を交互に配置したトラス構造 軽量で、複雑な形状にも対応できる |
ワーレントラス | 正三角形のユニットを組み合わせたトラス構造 部材の本数を減少できるのが特徴 |
山形トラス | 強度と剛性を持ちながら視覚的な美しさも兼ね備えている 建築物の屋根や橋梁などで使用される 荷重を効果的に分散できる |
張弦梁トラス | 上弦(じょうげん)と下弦(かげん)と呼ばれる水平なメンバー(棒材)で構成 上弦が張力を受けることで「剛性と強度」「軽量化」を実現 |
特殊トラス | 特殊な目的や要件に対応するために設計 一般的なトラス構造よりも複雑な形状を持つ 設計と施工により高度な技術と計画が必要 |
事例や活用法
中間柱のない大空間が可能なため、倉庫・工場・店舗・事務所・ホールなどに活用されています。 レイアウトを自由に変更できる開放的な空間のため、店舗であれば商品陳列棚や照明などを自由に配置できるのがメリットです。 倉庫の場合は、大きな荷物を問題なく格納でき、搬入搬出がしやすいよう大きな開口部も設けられます。 事務所の場合は、パーティションで自由に仕切りができ、開放的でコミュニケーションしやすい雰囲気のオフィスが実現できるでしょう。
木造トラス構造のメリット
木造トラス構造のメリットを以下の2つ紹介します。
● 強度が高い
● 軽量化できる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
強度が高い
部材の両端がピン接合された三角形のため、外力を加えても曲げに強く軸力しか発生しません。 とくに地震や風などの外力に対して耐力性を発揮します。 大型建築物や複雑な形状をした建物に向いており、10mを超えるスパンであれば単純梁ではなくトラス構造がおすすめです。
軽量化できる
木材は鉄に比べ軽量であるため、建物の自重を軽減できます。 その結果、基礎への負担が軽くなり、建設コストの軽減につながります。 また、トラス構造は一般建材のような細い部材で構成されているのに、加圧による曲げや折れにも強いといった特徴があります。 構造的な安定性があるため、ドーム型などの大きな屋根の建設も可能です。
木造トラス構造のデメリット
木造トラス構造のデメリットは、以下の2つです。
● 部品が多く手間がかかる
● 高さが必要
それぞれ詳しく見ていきましょう。
部品が多く手間がかかる
トラス構造は、接合部が複雑で施工に一定の手間がかかります。 各部材の接合には高い精度が要求され、設置の際には技術力も必要です。 案件によっては全体の材積が増えてしまうこともあります。 また、構造が複雑なため、複数の部材を準備しなければなりません。 接合部の金物やパーツが増えると、割高になる場合もあります。 設計も高度な構造計算が必要です。
高さが必要
トラス構造は、三角形を基本とすることで高い強度を得ています。 この三角形を構成する部材(上弦材、下弦材、斜材など)は、ある程度の高さが必要になります。 とくに、大きなスパンをカバーするほど、トラスの高さも大きくなる傾向です。 天井が高くなることで、採光や換気が難しいといった課題もあり、高窓を設置するなどの工夫が必要でしょう。
木造トラス構造の建築工程
木造トラス構造の建築工程を4ステップで解説します。
1.設計・部材の準備
2.搬入・仮設
3.設置
4.仕上・完成
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.設計・部材の準備
建物の用途や荷重条件に合わせて、必要なトラス構造を設計します。
その後、集成材や接合部の金物を準備します。
構造設計:トラスの形状・部材の寸法・接合方法などを決める、荷重計算し安全性を確保
詳細設計:製作図を製作し、各部材の寸法や数量を確定
工場製作:設計図に基づき、工場でトラス部材を加工・製作
トラス部材の制作は、木材の乾燥・加工・接合などの高度な技術が必要です。
2.搬入・仮設
製作された部材を、基礎工事が完了している現場に搬入します。 場合によっては大型クレーンが必要なケースもあります。 次に、トラスを組み立てていく仮設足場を設営します。 安全に作業するために、しっかりと固定します。 足場が設営された後、部材を架設場所に吊り上げていきます。
3.設置
部材を組み上げて、トラスを設置していきます。 大型トラスの場合は、クレーンを使用して吊り上げながらの組み立てです。 下弦材から斜材、上弦材の順で架設。 部材の接合には、ボルトや金物などを用います。 トラスが固定されるまでは、仮筋や仮柱などでトラス構造を支え、最後に高力ボルトを使用して、各部材をしっかりと締め付けます。
4.仕上・完成
架設したトラス構造に、屋根や壁などの外装材を取り付けます。
● 屋根材の施工
● 外壁の施工
● 内装の仕上げ
● 設備の設置
必要に応じて、断熱材や防音材なども取り付けます。
外装材には、金属板、サイディングなどさまざまな材料を使用します。
すべての工事が完了したら、最終検査を行い、問題がなければ建物完成です。
「PREST WOOD」は木造トラス構造で大空間を実現
木造トラス構造は、無柱大空間の実現に欠かせない構法です。
荷重が軽く、外圧に強いため、安全面でも定評があります。
木造トラス構造の建築には、緻密な構造計算や工場での加工・製作が必要なため、専門的に扱っている企業への依頼が必須です。
PRESTWOODは、無柱大空間を実現できるATAハイブリッド構法を採用しています。
綿密な構造計算や工場への手配、建築・外構・内装などワンストップでご依頼いただけます。
大スパンのオフィスや倉庫を検討していらっしゃる方、もしくは建て替えを検討している方は、ぜひお問い合わせください。無料で資料もお渡ししております。
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